2024年3月10日日曜日

シューマン ピアノ協奏曲_カッチェン

 シューマン ピアノ協奏曲イ短調OP.54,カッチェン;ケルテス<イスラエル・フィル><1962年録音>にて聴く。奇しくも40代前半で命を落とした2人の演奏。冒頭のカッチェンの決然さに応えるケルテス。続く第一主題では、さほど甘くないオーボエの主題を受けるカッチェンのピアノが、ロマンの香気とメランコリーの息吹を吹き込む。この第一主題はダーヴィト同盟員としてのクララの名前である「キアリーナ Chiarina」の綴りを音名変換(CーHーAーA)で有名だ。カデンツァのカッチェのピアノは、重ねられた和音の豊かな音色を余すことなく表現し、トリルを伴った繊細で儚い響きもお茶の子さいさい。緩徐楽章では、イスラエル・フィルの極上の弦楽群(チェロ)を堪能できる他、伴奏に廻ったカッチェンの優しい響きを相伴に預かる事ができる。終楽章、カッチェンの軽やかな指の鍵盤の行き来が見えるようだ。煌めくようなピアノの旋律、満を持してのオーケストラの絡み合い。激しさの中でも透明感を失わないカッチェンの珠玉の一枚です。

4人、ピアノ、テキストの画像のようです
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2024年2月24日土曜日

グリーク ピアノ協奏曲_アンダ

 グリーク「ピアノ協奏曲イ短調 Op.16」ゲザ・アンダ(p)クーベリック;ベルリンフィルハーモニー(1963年録音)で聴く。

この曲の聴きどころは、何と言ってもアンダの透明感にあふれ、硬質な音色だろう。シューマンと同じイ短調で書かれたこの曲は、なんと400回も修正がされたものらしい。我々が聴いているのは初稿から40年間修正続けてきたもののようだ。第1楽章、カデンツァのアンダの燦めくような音は素晴らしい。ブラームスで見せた豪快な拳打も聴きものだ。第2楽章は、弱音器をつけた弦楽群から始まり、トランペット、木管群、ホルンと感傷的なフレーズが奏でられピアノが引き継ぐ。アンダの優しさ・繊細さが滲み出る白眉の場面。第3楽章、決然とした民族舞踊的なフレーズに合わせ、歌うピアノ、中間部のカールハインツ・ツェラーのフルート独奏は軽やか。終盤にかけての「雪崩式ブレンバスター的」な白熱の場面でも、アンダはブレることなく確実な拳打でそのロマンティシズムを見せつけてくれる。クーベリックは、表情の豊かさに重きをおいた見事なサポートでした。


2024年2月18日日曜日

シューベルト 交響曲第5番_サヴァリッシュ

 シューベルト 交響曲第5番変ロ長調 D.485、サヴァリッシュ;ドレスデン・シュターツカペルレ(1967年録音)。

5番は、モーツァルトの和声を色濃く模し、如何にモーツァルトが好きだったかがわかる名曲だと思っている。
その中で、第1楽章のテンポがあまりにも違いすぎる曲も珍しいが、少なくともallegroを感じさせないものはいかに巨匠であっても、「モーツァルティアン」としては聴くに値しないと思っている。ワルターやベームだとしても。そこで今回選んだのは、サヴァリッシュでした。さて5番の楽器編成:フルート1,オーボエ2,ファゴット2、ホルン2,弦楽5。楽章テンポは、(1)Allegro(2)andante(3)menuete&tiro allegro (4)allegro 。ハイハイもう答えは出てますね。文字通りモーツァルト40番ト短調交響曲まんまです。29番K.201の優雅さを備えた第1楽章、モーツァルトのピアノ協奏曲の緩徐楽章のような優しくかつ仄暗さを持つ第2楽章、40番K.550のオマージュとも言える第3楽章、変幻自在の終楽章。魅力的な作品です。
サヴァリッシュのメリハリのある構成、ドレスデンの木管群の美しさ、この曲にぴったりです。


2024年2月10日土曜日

マーラー 交響曲第2番「復活」_小澤征爾


 https://www.youtube.com/watch?v=rLt9tyCH4t4

1995年6月14日、長崎浦上天主堂にて行われた,「小澤 征爾 平和への「復活」コンサート」小澤征爾指揮,新日本フィルハーモニーによる,マーラー「復活」、(メゾソプラノ)フローレンス・クィーヴァー、(ソプラノ)キャスリーン・バトル。オーケストラ・メンバーには友情参加としてボストン交響楽団員,シカゴ交響楽団員が加わり,合唱は,コンサートのために特別編成された「長崎復活コンサート合唱団」並びに「東京オペラ・シンガーズ」,「成城合唱団」を視聴。安らかにお眠りを。

2024年2月9日金曜日

マーラー 交響曲第6番「悲劇的」_ラトル

 マーラー 交響曲第6番「悲劇的」、若きラトルとベルリン・フィルの初共演(1987年ライブ)にて聴く。2002年にシェフに就任する15年前の貴重な一枚。2.3楽章は、アンダンテ・スケルツォの順番。2018年、ベルリン・フィル退任ラスト・コンサートもこの6番、順番はアンダンテ・スケルツォでしたね。



2024年2月3日土曜日

サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」_オーマンディ

 本日カミさんは、実家に帰省。一人で大音響で聴きたい曲がある。サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調 op.78「オルガン付き」、オーマンディ、フィラデルフィア管弦楽団、(Or)エドワード・パワー・ビッグス<1962年:録音>。オーマンディの18番とも言うべきこの曲の2度めで、当時、人気を博していたエドワード・パワー・ビッグスをオルガニストに招いての録音。グレゴリオ聖歌「ディエス・イレ」を循環主題にしたこの曲のドラマチックさと、主題が変わっても裏で細かい音型を刻みながら動き続ける部分が妙に心を揺さぶられる。第1楽章後半で静かなオルガンの響きに導かれ登場する弦楽群の調べの美しさも捨てがたい。第2楽章、フィラデルフィアサウンドの真骨頂。地柄強い弦楽群、跳ね回る木管群、そしてサン=サーンスならではの、ピアノのIN。美しい弦楽器の調べが静かにながれ、低弦群がおさめるといよいよ後半部、劇的なオルガンの響き、水面のきらめきのような4手のピアノの循環主題。ハリのある金管群。緊張感のあるフーガと牧歌的な木管群の主題が交互に現れながら、その中を循環主題が壮大なコラールのように奏でられていく。フィラデルフィア管は、全く弛緩せず壮麗さを保つ。はい、名盤です。



2024年1月28日日曜日

ベートーヴェン 交響曲第3番「英雄」_モントゥー

 ベートーヴェン 交響曲第3番変ホ長調Op.55「英雄」、モントゥー;ウィーンフィル<1957年録音>を聴く。

颯爽たる第1楽章、咆哮と悲しみの第2楽章、うねりの第3楽章、そして瑞々しい終楽章。モントゥー爺さんの生命力あふれる「英雄」。抜群の安定化です。さて、モントゥーの第1楽章コーダ部分でトランペットが途中で消える部分がある。これは、コンセルトヘボウ管との演奏もだ。実はベートーヴェンの時代は、トランペットではよく聴く高音が出せなかったらしく、途中から他の楽器にバトン・タッチするように書かれたものらしい。モントゥーはそれを忠実に行っているのだ。実に面白い。


2024年1月20日土曜日

モーツァルト レクイエム_イッセルシュテット

 モーツァルト「レクイエム」、イッセルシュテット;北西ドイツ放送交響楽団・合唱団(1952年録音:THARA)を聴く。

リーザ・デラ・カーザ – Lisa Della Casa (ソプラノ)
マリア・フォン・イロスヴァイ – Maria von Ilosvay (コントラルト)
ヘルムート・クレープス – Helmut Krebs (テノール)
ゴットロープ・フリック – Gottlob Frick (バス)
イッセルシュテットならではの緊迫感のある硬質な仕上がり。錚々たるソリストを揃えての隠れた感動の名盤。


2024年1月19日金曜日

シューマン 交響曲第3番「ライン」_コンヴィチュニー

 有給休暇につき、シューマン 交響曲第3番 変ホ長調 Op.97「ライン」,コンヴィチュニー:LGO<1960年録音>にて聴いてます。

そういえば、先週の日曜劇場「さよならマエストロ」の主題曲、予告編からこの「ライン」かと思っていましたが違いました。
挿入曲も当該ドラマではあまりクラシック音楽は使用されてませんでした。残念!!
ちなみに、この「ライン」以外では、
ヨハン・シュトラウス2世:ポルカ「狩り」、
バグリー:行進曲「国民の象徴」
ベートーベン:交響曲第5番「運命」のみ。
いずれも演奏として登場しただけでした。
さて、コンヴィチュニー:LGOの「ライン」ですが、くすんだ弦楽群、ホルンも古色騒然、これこそがこの曲のイメージの音。どこかの帝王みたいにピッチをギリギリまで上げて、大吟醸なみに磨いてしまうと良さが損なわれてしまんですわ。そしてスーパーインテンポな堂々たるコンヴィチュニーの凄み。重厚にして壮大。仄暗く底光りのする渋いオーケストラの響き。好きです。




2024年1月3日水曜日

ブラームス 交響曲第1番_ボールト

 2024年、毎年恒例ブラームス 交響曲第1番での聴き始め。今年の選択は、エイドリアン・ボールト;ロンドンフィルハーモニー管弦楽団(1972年録音)。

ボールトの音楽性に惚れたメニューインがコンサートマスターとして参加。もちろん第2楽章のソロも担当している。

重厚感あるただただ正確なアーティキュレーションで響く冒頭主題が素晴らしい。提示部をリピートしている珍しい録音でもある。あくまでインテンポで進む無骨なブラームスが光る。




2023年12月23日土曜日

R・コルサコフ_「クリスマス・イヴ」組曲_アンセルメ

 本日は、久しぶりの有給休暇です。珍しくどこへも行きません。洗車を済ませ、ホット一息。コーヒーブレイク。R・コルサコフの歌劇『クリスマス・イヴ』組曲。アンセルメ;スイス・ロマンド管弦楽団(1958年録音)。



2023年12月16日土曜日

シューマン 交響曲第3番「ライン」_サヴァリッシュ

 シューマン 交響曲第3番変ホ長調OP.97「ライン」、サヴァリッシュ、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団(1973年録音)にて聴く。

N響アワーのOpening曲としても使われた(2008-12年)第1楽章は、逆巻くローレライの川浪を思わせる。とにかくこの時代の「SKD」は素晴らしい。シルキーな弦楽群、「ライン」に欠かせないペーター・ダム率いるホルン群、ゾンダーマンの乾いてメリハリの効いたティンパニー。木管群の豊かな響き。そしてサバリッシュの清冽な音楽性が躍動感の中に筋肉質なオーケストレーションを生み出す。決してマーラー編でなくても完成度の高い演奏だ。4楽章、調記号は変ホ長調でありながら「変ホ短調」の荘厳なコーラル。バッハの平均律クラヴィア第1巻:第24番 ロ短調 BWV.869の旋律。ここが「ライン」の真骨頂。SKDの低弦群のなんと重厚感のある音色。さあ、フィナーレへ向け、ケルン大聖堂の鐘が「変ホ短調」で響く。1拍遅れのホルンがこだまのようにFp。押しも押されぬ名盤であります。



2023年12月15日金曜日

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲_コーガン

ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲ニ長調OP.61を聴く。(カデンツァ:ヨアヒム)コーガン;シルヴェストリ、 パリ音楽院管弦楽団<1959年録音>。コーガンの冴えわたった音色にただただ聴き惚れる。


 

2023年12月9日土曜日

ムソルグスキー「展覧会の絵」_オーマンディ

 ムソルグスキー「展覧会の絵」、ショルティ;シカゴ交響楽団<1980年録音>を聴こうか。スーパープレミアムブラスセッションに誰しも異論はないはず。冒頭のハーゼスのトランペット「参りました。」ビドロのジェイコブスのチューバ、「惚れてまうやろう!」



ブラームス ドイツレクイエム 41

 ドイツ・レクイエムを聴く 41

またまた、大学の同級生H君よりの戴き物。最近は円盤組合や塔やニッパーに行くこともなく戴き物が多い。
ピアノ4手によるドイツ・レクイエム。フィリップ・モルによる編曲版、【演奏】フィリップ・メイヤーズ(P)フィリップ・モル(P)マーリス・ペーターゼン(S)コンラッド・ジャーノット(Br)
ベルリン放送合唱団
サイモン・ハルジー(合唱指揮)【録音:2009年11月11-13日】
ドイツ・レクイエムはブラームス自身の手による4手のピアノによる編曲された楽譜が残っているが、声楽パートも無く、ピアノのみで演奏するためのものだ。そのため、録音する場合は総じて編曲が行われるが、当盤もアメリカのピアニスト:フィリップ・モルによる編曲である。1曲、比較的優雅なテンポでスタートし、コーラスは極めて透明感のある歌いだしで変に重さを感じない。ピアノ版の良き面であろうか。さすがにベルリン放送合唱団は淀みなくパレストリーナ風の対位法をこなす。2曲、変ト長調に転じてからのコーラスの美しさと柔らかさは聴き物。ピアノの編曲も面白い。2曲の醍醐味「Aber des Herrn Wort」のテノールも気張りなくきっちり決まっている。ソプラノの余韻も美しい。3曲、ジャーノットは、伸びのあるモノローグを聴かせてくれる。後半部の壮麗なフーガは、あくまでも美しく柔らかくがモットーのようだ。5曲、ソプラノのペターゼンは、まろやかな好きな声だ。テンポは少し速め。6曲、ピアノ版では、やはりどうしても劇的さが不足するのは致し方なしか。中間部の勝手に七色のハーモニーと呼んでいる部分のテンポとゆらぎには不満が残る。大フーガのテンポは個人的にはもう少し遅くして欲しかった。7曲、この出だしは弦楽群の美しい調べがないとなぁ、ピアノ版を聴くと、どうしてもそう思うのであります。ベルリン放送合唱団は、さすがでした。



2023年11月18日土曜日

モーツァルト 交響曲第40盤_ペーター・マーク

 モーツァルト 交響曲第40番ト短調 K.550、ペーター・マーク、パドヴァ・エ・デル・ヴェネトー管弦楽団(1996年録音)を聴く。フルトヴェングラーに師事し、若くしてワルターを継ぐモーツァルト指揮者として出発するも、商業主義に嫌気が差し隠遁しギリシャ修道院へ入ったり、禅の修行をしたり。そんな身でありながら、復帰し悠然と好きな音楽をしたマークの晩年の録音。41番は評判だが、この40番はさほどでもないのだが私は好きだ。冒頭は楽譜通り速いテンポでありながら、見事に表情をつけ強弱を利かす。それによって彫りの深い味わいが生まれ、ホルンの力強さが立体感を与える。モーツァルトを愛するマークならではの、内声部の聴かせ方もなるほどと
思わせる。弦楽群は、時には繊細に、時には雄弁に歌う。

2023年11月11日土曜日

モーツァルト 交響曲41番「ジュピター」_カイルベルト

 モーツァルト 交響曲第41番 ハ長調 K. 551 『ジュピター』 、カイルベルト(指揮)バンベルク交響楽団(1959年録音)を聴く。そのためのパーカーも用意したぞ!!

余談だが、TELDECの録音は優秀だ。私のチンケな音響システムでもしっかり鳴ってくれて解像度も高い。
カイルベルトは、後期交響曲をすべて録音しているが、いずれも骨太でウィーンの香りのしない他と一線を画するがっしりした演奏だ。特にこの41番。考えてみれば、ジュピターほど男性的な交響曲はないのだから、この正攻法のカイルベルトの音楽がしっくり来るのも頷ける。






モーツァルト レクイエム_ケンペ

 なんとなく久しぶりにモツレクを聴きたくなる。ルドルフ・ケンペ指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 聖ヘトヴィク大聖堂合唱団 (S)エリーザベト・グリュンマー (A)マルガ・ヘフゲン (T)ヘルムート・クレープス (Bs)ゴットロープ・フリック (1955年MONO録音)。カラヤンに遡ること6年前の録音だ。フルトヴェングラーの録音が残っていないので(演奏はしたらしい)、BPO戦後初の録音とも言えよう。ゆっくりとしたテンポのケンペのモツレクは、その古びたエリーザベト・グリュンマー の発声法も相まって、フルヴェン時代の影響が色濃く残るベルリン・フィルの漆黒の響きを味あわせてくれる。聖ヘドヴィッヒ合唱団のしっかりとした歌唱は、インテンポで進むケンペの棒にマッチし、極上のフーガを奏でる。ゴットロープ・フリックの声は、柔らかみのあるバス、ヘルムート・クレープスは、若々しい歌声。サンクトゥス、ベネディクトス、アニュス・デイと、これまでと違う速めのテンポにしたのは、ジェスマイヤーによるものと区別するためかは分からない。いずれにしても、ベルリン・フィルの貴重な録音であることに疑いはない。



2023年10月9日月曜日

ブラームス 交響曲第4番_ベイヌム

 ブラームス 交響曲第4番ホ短調OP.98 ベイヌム:アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(1958年:録音)。ジャケットには、ロイヤルと書かれているが、これは素人!ベイヌム時代はアムステルダム、ロイヤルが冠されるのは1988年。以上 余談。写真3<コンサートホール:コンセルトヘボウ>写真2<4番が書かれたオーストリア:ミュルツツーシュラーク(ウィーンの南西85km)>。第1楽章、早めのテンポで、幽愁感はみじんもなく、キビキビと進んでいく。ただ往時のヘボウ管の古色なシルキーな弦楽群とセピアをまとった木管群のふくよかな響きに、底知れぬ哀愁を感じ取れる。第2主題のコントラバスの濃厚さも印象的だ。2楽章アンダンテは、第2主題のチェロの泣かせるほどソフトな表現、第2主題再現部の弦楽八声部の柔らかさ、GOODきます。第3楽章、打って変わって男性的な響き。終楽章への見えないブラフをうまく表現している。終楽章、日悪的速いテンポ、霧に包まれるような弦楽群の響きの中から突如現れる、息の長いフルートのソロの美しさ。奏者はフーベルト・バルワーザー。古典的でありながらロマンティックに仕上げるベイヌムの強弱や静動の構成力。オーケストラの持つ音色がマッチした良き香りの名演です








2023年9月2日土曜日

ドビューシー ピアノ名曲集_モニカ・アース

ドビュッシー:ピアノ名曲集、モニカ・アース(P)1970.1971。
9月に入ってもまだまだ真夏日は続く。こちらもただただ癒し。
モニカ・アースは、パリ音楽院首席で生粋のパリジェンヌ。硬軟使い分ける繊細な粒立ちタッチ。音の余韻に音楽を感じられるドビュシーにはもってこいのピアニスト。ごっつあんです。

2023年8月30日水曜日

ベートヴェン ピアノ協奏曲第3番_タッキーノ

 ベートーヴェン ピアノ協奏曲第3番ハ短調Op.37を聴く。

ガブリエル・タッキーノ;クリュイタンス、ベルリンフィル(1962年録音:イエス・キリスト教会)にて。ともにフランス系によるベートーヴェン。(クリュイタンスはフランス系ベルギー人)タッキーノはよく知らないが、プーランクのお弟子さんらしい。クリュイタンスは、フルトヴェングラーの味が染みついたベートヴェンの録音を避けたカラヤンからベルリンフイル初のベートーヴェン交響曲全集を勝ち取った兵<つわもの>。演奏は、This is イン・テンポ。3番のもつベートヴェンの暗さを全く感じさせない美しい演奏。これほど美しい3番は他に聴かない。タッキーノのタッチは、力強さも柔らかさもどちらも兼ね備え、まさに小細工なしの正統派。クリュイタンスのサポートに支えられ、まさに隠れた名盤でした。



2023年8月26日土曜日

ブラームス ピアノ協奏曲第1番_ワイセンベルク

 ブラームス:ピアノ協奏曲第1番ニ短調OP.15を聴く。カラヤンのお気に入りであったがゆえに、持ち味が十分に発揮されているとは言い難かった不遇のピアニスト。そんなワイセンベルクが、1972年にジュリーニ:ロンドン交響楽団と組んでの録音。皮肉にもカラヤンがたぶん演奏も録音もしなかった、この曲。速度表記のない第1楽章だけにジュリーニにはぴったり。もちろん冒頭からジュリーニの男気炸裂。いつもながらのゆったりテンポ、風神雷神のような豪快なティンパニー!!ワイセンベルクも気合十分。スマートさをかなぐり捨てて男気と男気の勝負!でも1音1音の美しさはさすがだ。展開部、ワイセンベルクの打鍵に刺激されジュリーニが吠えてるぞ。圧巻の嵐の第1楽章だ!!第2楽章、低弦部の重厚さの中、ワイセンベルクのリリックな音色は、やさしく少女の髪をなでるかのようだ。中間部の強奏ではクリアの音で気持ちの高まりを思わせる。終楽章、出だしのバロック風のピアノのはワイセンベルクの十八番!ラストへの怒涛の競演も凄味も聴きどころ。ロマンチシズムたっぷりの名演!しかし録音悪し( ノД`)シクシク…名盤ではなし!!



2023年8月12日土曜日

R・コルサコフ シェラザード_オーマンディ

 R・コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」、オーマンディ:フィラデルフィア管、(V)アンシェル・ブルシロウ(1962年録音)で聴く。

煌めく金管群の巧さ。柔らかな弦楽群の音色。まさに往時のフィラデルフィア管にまさにぴったりの曲。ブルシロウのヴァイオリンの響きはある時はチャーミングに、ある時は野性味あふれる使い分けが良き。トランペットのギルバート・ジョンソンのトリルも聴きもの。第3曲は、白眉だ。弦楽群は、変に甘くなく、それでいてよく歌う。ヴァイオリンソロからオーボエ・ホルンとつなぎ、ハープのアルペジオを経ての月明かりの夜のような終結。ここが好きです。4曲、メリハリのある金管群、キレのあるパーカッション。終盤手前の疾走感。60年代のフィラデルフィア管は本当に凄味があります。名演とさせていただきます。



シューベルト 交響曲第8(9)番「グレイト」_ケンペ

 シューベルト 交響曲第8(9)番ハ長調 D.944「グレイト」、ケンペ;ミュンヘンフィル(1968年録音:ミュンヘン、ビュルガーブロイケラー)を聴く。

冒頭のホルンの毅然とした音がこの演奏の方針を示す。そして馥郁たる香り漂うオーケストラの響き、良く歌う弦セクション。当時のコンマスは、クルト・グントナーだ。奥行き感と臨場感を感じさせるた両翼配置の効果。推進力を秘めているが、変なアッチェレランドなどせず、インテンポで男気の終結部を奏す。第2楽章は、明快なアクセントでやや早めのテンポで展開。美しく気品あるオーボエ。再現部のアクセントとレガートの対比、劇的な静寂も素晴らしい。3楽章、主部の弦楽群の迫力、トリオでの木管群の鄙びた香りがまたいい。軽く揺れを生み出すケンペの絶妙な棒も魅力だ。白眉は終楽章、早めのテンポでこれでもかと驀進し、まさに息をもつかせないオーケストラ。突進力を持ちながら、弦楽群の刻みに一切の乱れも見せない確かさ。冗長で退屈などと言わせないケンペの見事な統率。終結部も強烈な推進力とパワーを持ちながら、インテンポを貫き通す愚直さ。統率された豪放!まさに名演!!です。


2023年8月6日日曜日

ドヴォルザーク 交響曲第8番_ドラティ

 相変わらず暑い日が続きます。こんな日は爽快な曲でも聴きたい。ドヴォルザーク 交響曲第8番ト長調OP.88 ドラティ、ロンドン交響楽団(マーキュリー盤:1959年録音)を聴こう。

第1楽章序奏は、ゆったりとしたテンポで始まり、フルートのさわやかな音色とともにダイナミックかつ雄渾な第1主題。マーキュリーのシャープな音にずばりマッチ。序奏と第1主題の何気ない対比で曲に吸い込まれてゆく。コーダも思い切りの良さもドラティならではの男気を発揮、素晴らしい。第2楽章は、中間部が好きだ、フルートとオーボエのあとに登場するヴァイオリンソロ。その後のトランペットの高らかな響き。白眉は短い第3楽章か。ドラティは、高速のテンポで小粋に進んでいく。哀愁のト短調と呼ぶべき出だしのワルツはメロディテーラーのドヴォルザークらしい美しさ。中間部のボヘミア風味の哀愁感もたまりません。コーダは、2/4拍子だが、実質は3/2拍子。この曲の主役ともいうべきトランペットがきちんと最後を締めくくる。終楽章、爽快なトランペットのファンファーレとともに序奏が始まり、チェロが主題をゆったりと奏でる。トルコ風の陽気なメロディが入り、半音下げの転調の遊びをまじえ、フィナーレへ。ここで、チェロが変奏曲を滔滔と歌うのも面白い。コーダの急速展開はドラティのまたまた男気が登場。直前のブレーキもこうくるかぁ!やはりドラティの切れ味はそそられます。